October 15, 2010

原子力って何ですか? 4)祝島

瀬戸内海。
空と海の中に、うっすらと浮かぶハート型が見えます。
島の周囲、わずか12キロの小さな島。

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その名前を「祝島(いわいしま)」といいます。

祝島は、山口県上関町の島です。

瀬戸内海では、海上交通の大切な場所にあり、
船の安全を祈願する神様の島として、大切にされてきました。

300px-山口県-祝島-位置地図












弥生時代の昔から、漁業が盛んで、人々は半農半漁の生活を営み、
多いときには5000人ものたくさんの人が暮らしていました。

しかし、2010年6月の段階で、人口は1/10の500人になり、
そのうち、65歳以上が69%以上。
年配の方が多くなる一方、人は少なくなり、過疎化が進んでいます。

まるで、時代から取り残されたような、静かで小さくて、美しい島。

この小さな島が、その名前が知られるようになったのは、
そのすぐ目の前の海が、『上関原子力発電所』建造計画の候補地のなったからです。


『上関(かみのせき)原発』は、中国電力が計画している、新しい原子力発電所。
祝島と対面する「長島」先端の田ノ浦(たのうら)に作られます。

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祝島に作るのではないのね。
完成すると、こんな感じ(↓)になるらしい。

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海岸線が大きく変わるほどの大規模な造成です。
2基の原子炉を作る予定で、そのうち1号炉の建設が始まりました。


「推進派」と「反対派」。
原発の建造計画は、町を2つに分ける争いに発展してしまいます。

原子力発電所ができれば、多額の助成金や固定資産税のお金で生活は保証される。
新しい雇用も生まれるし、人が増え、産業が活発になる。
どんどん減りつつある人口。どんどん高齢化しつつもある。
祝島の子供も生徒がいなくて、学校が休校になるくらい。
過疎化した地域に、人を呼び戻したい。

「推進派」の人々の意見です。


原子力発電所からは、海水温度より7℃も高い温排水が、
毎秒190トンの勢いで、海に流れ込みます。
希少種が多く暮らす海域に対する影響が懸念されること。
また、地震を引き起こすかもしれない「岩国活断層」が近くにあること。
万が一の事故が起きたら、どうするのか?という不安。

「反対派」の人々の意見です。


祝島問題は、ネット上でも盛んに議論されます。

原発に反対する村人を村八分にしたり、
漁業補償のお金を受け取る子供の縁を切ったり、
同じ村の中、同じ家族での争い。そういう話も聴きました。
選挙で、賛成派の町長に投票するために、社員を転入させる電気会社。
シーカヤックで、資材搬入を防ごうとする活動家もいます。
沢山の署名や抗議の声にも耳を貸さない中、原発の建造は始まります。

『祝島問題』は原子力の問題であると同時に、社会全体の問題でもあるの。

私は、これに「反対」とは云えませんでした。
僕がそれを云えるのだろうか。


・・思うのは。
純粋に、反対派の人の想いは、昔ながらの暮らしを営みたいというものだと思う。
ずっとずっと長い間、漁業で暮らしてきた島。

「原発のある海の魚なんて」って、いくら魚を捕っても、もう売れないの。
同じ生活は、もうできません。

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開発予定地の田ノ浦。
この山林を切り分け、海を埋め立て、原子力発電所は作られます。

私たちにとっては、
ここは、どこにでもある、ただの青い海かもしれません。

でもこの島に暮らす者にとって、そのおじいちゃんが、またそのおじいちゃんも、
ずっと、その一生を遠く眺めて暮らした風景と変わらない、同じ青い海岸です。

そこには、時間も空間もなくなるのだと思う。
同じ海を遠く眺めて暮らし、彼らはその人達と出会い、また誰かが彼らと出会う。
それは、私たちの暮らしから無くしてしまった、大切なものだと思うの。

変わらないとは、変わり続けることだけど、
変わらないで、残していきたいものもあります。

取り残されるのか、変わってしまうのか。

どちらが、正しいか、正しくないか。
それを責め合う前に、もっとたくさんの人に伝えていきたい。
みんなに知ってもらえるように。
なにもかも、壊してしまわないように。


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上関原発が稼働し始めると、2基合わせた総出力は、274.6万キロワット。
一般家庭、約206万世帯分の電気を作ることができます。
長崎県大村市で建造中の大規模太陽光発電所(メガソーラー)でさえ、
1万キロワット(7500世帯分)がやっと。

今の私たちの暮らしは、たくさんの電気を必要としています。

電気を使うのは、私たち。
祝島のいろんなこと。
その上で、私たちが暮らしているの。

声をあげて「反対」という。
その中で、もっと伝えていくことの大切さを思いました。


必要のない電気をひとつ消して欲しい。
子供達に、そんな電気の大切さを教えていきたいと思うのです。




【お礼】
冒頭の透き通るような空色の航空写真は、
blog【空の旅と身近な風景】のsai-unn様から
美しい澄んだ田ノ浦、輝く海の船、建設予定図の写真は、
blog【Liberal Utopia 持続可能な世界へ】の渡瀬様から

それぞれの方のご了承を得て、お借りすることができました。
心から感謝いたします。


 【原子力の記事】
原子力って何ですか 1)原発と原爆
原子力って何ですか 2)チェルノブイリ
原子力って何ですか 3)原子力の未来
原子力って何ですか? 4)祝島
原子力って何ですか? 5)福島第1原発事故
原子力って何ですか? 6)放射能って危険ですか?

 【関連する記事】
【環境って何だろう?】

bluetailhappiness at 20:15│Comments(8)TrackBack(0)clip!原子力って何だろう? 

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この記事へのコメント

1. Posted by 。   October 16, 2010 08:06
祝は、ほふりとも読みます。
祀と同様、身を浄くして
神様に仕えることをいうの。
日本人にとっての神様ってね、
本来は、自然そのものなのよ。

かつて、いのちを育む食物を育てることと、
神様を祀ることは一つでした。
人は、身体という器に魂を止めた存在だから。

いのちのない食物が増え、
御霊(みたま)の存在できない地が増え、
それに危惧も覚えない人が増え、
何を次の世代に残すべきかを見失っている。
それが、今のこの国のかたち・・・?
2. Posted by papa   October 16, 2010 20:00
日本人独特の自然観だと思います。

>何を次の世代に残すべきかを見失っている。

そうですね。
変わらないでいれば、取り残されます。
それが不幸せなことであるのか、幸せで在るのか。

環境問題は、CO2とか、温暖化とか絡むから、
見えづらくなるけど、違う問題だと感じています。

大量生産、大量消費の社会ではなくなってっも、
日本は貧しい国にならないと思うんです。
困るのは、僕たちじゃありませんもの。

何かを否定することなく、変わっていければと思います。

今回、いろんな意見も尊重できるように書いてみましたが、やっぱり電気使う側にしては、ちょっと重い内容になってしまうんですよね。

でも、原発や石油に頼らない時代が、必ずくると思うんですよ。
3. Posted by goodtime-masuho   October 16, 2010 21:33
原発は無いほうがいい。
でも、それには今の電力の使い方を変えなくちゃいけない。
なかなか、それは難しい。
いつかきっと石油は無くなる。
原発はそれにとって変わるかも、
でも原発を作るための技術や先端素材は
化石燃料に依存しているものが多いはず。
つまり、化石燃料が無くなれば原発も作れなくなると思う。
化石燃料の存在なくしてはもはや人類の社会は成立しない。
原発には頼らなくてもやって行けるけど、
石油、化石燃料の存在なくしては、成り立たない。
クリーンで決して枯渇しないエネルギー源を研究しなければ、
化石燃料の枯渇をただ先送りしているにすぎない。
それに必要なあらゆる素材も化石燃料に依存しなくて済むような、
そんな夢のようなエネルギー源の研究をしている人はいないのだろうか?
4. Posted by papa   October 16, 2010 23:48
師匠、いつも有り難うございます。

日本だと、メタンハイドレートでしょうか。
掘り出すのが難しい。

HHOで走る車とか、地中に銅板埋める電池とか、新しいアイデアも在るけど、エネルギー問題を解決するほどじゃありません。

出力エネルギー量から考えると、原発は大きい。
クリーンかどうかは別にしても。

そもそも、石油有限じゃないという人もいますし。
(頑張って、記事書いて見ました♪)

【エネルギーを考える 1)無限の石油】
http://blog.livedoor.jp/bluetailhappiness/archives/1118871.html

ファンタジーの魔法使いみたいに、手から魔法で火花出せたら、最高のエコロジーなんですけどね〜。
5. Posted by goodtime-masuho   October 18, 2010 13:00
>ファンタジーの魔法使いみたいに、手から魔法で火花出せたら、最高のエコロジーなんですけどね〜。

内緒ですが、手が熱くなるので、最近はやりません。
6. Posted by papa   October 18, 2010 15:34
達人的なコメントに、参りました(笑)。
笑いすぎて、お腹痛いです。
7. Posted by 翔子   October 23, 2010 04:50
5 おはようございます。移転前のブログからちょくちょく拝読させて戴いています。 もし、1万人の人が今より少し質素に暮らせれば、かなり変わると思いながら、なかなか変われない、贅沢で便利な生活が当たり前な私ですが。祝島の事ですが、約85万人の署名が無視されてる現状を悲しく思います。便利な生活が優先、でも自然を求め人は海や山を訪ね、また開発の手が入る。そんな事何十年前から言われてきましたが、イヨイヨもうヤバいかもしれない。。人間は来るとこまで来てしまった気がしてなりません。原発には反対派です。家の隣に出来るなんて絶対嫌ですから 。。乱文になりまして申し訳ありません。お邪魔しました。
8. Posted by papa   October 23, 2010 09:42
85万人の声が100万人であったとしても、声は届かないでしょう。
守りたいという想いで集めていらっしゃる方もいたと思います。
こういうことを申し上げるのは、残酷かと思うのですが、
届かないのです。
でも、どの開発も同じでしたね。
想像も出来ないくらい、たくさんのお金が動いています。
署名では、止まらないのです。

祝島がどうなっているのか。
祝島がどうなっていくのか。

その結果、私たちが得たものをもっとたくさんの人に見てもらうべきです。
知れば、同じではいられませんもの。


世界は、まだ変われます。

問題の根源は、経済システムのあり方にあるのではなく、
そのシステムに依存して暮らす、僕たちに在るからです。

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