July 19, 2011

5分で分かる「アースバック工法」

アースバック工法という建築方法があります。

P6140496

英語で書くと『Earth Bag Tech(地球袋工法)』。


麻の袋に土を詰めて作る「土嚢(どのう)袋」を積み上げて、
家を造っちゃうユニークな建築方法です。


【アースバックって、何ですか?】

中東で、1000年以上前から実践されてきた家造りの方法で、
土を中心にして作る建築のひとつです。
土嚢袋に土を詰め、それをブロックの代わりに使うのが特徴です。

中東の建築に詳しい、イラン生まれの建築家Nader Khalili(ナダー・カリリ)氏が、
その技術をまとめ、発展させました。

のちに、米カルフォルニア州に、アースバックを教える学校(カルアース協会)を作ります。
(Nader Khaliliの名前は、ネーダー・ハリーリや、ネイダー・カリーリなどいろいろ和訳があります)

104960-original-xveag

このおじさんが、ナダーカリリ。

アースバックは、基本、アーチ構造なので、
ドーム型やかまぼこ型の家が作られます。

土嚢袋の素材には、『バーラップ(粗い黄麻線維)』か『ポリプロピレン』の袋が使われます。

バーラップ(黄麻)は、長期間の湿気を受けると、腐って破けてしまいます。
ポリプロピレン線維は、長期間の直射日光を受けると、線維が弱まり、破けてしまいます。

それぞれに欠点があり、風雨や直射日光を避ける工夫が必要です。
土嚢で造るアースバックは、漆喰など、何らかの素材で土嚢を被い、仕上げられます。

カリリは、厚めの粘土を壁に塗り、火を焚いて焼き固める「素焼き」に近い、画期的な方法で家の壁を造ります。

アースバックは、木をほとんど使わず、どこにでもある『土』を材料に家を建てることができるため、世界中のどの土地でも、アースバック・ハウスは建築可能です。

NASAでも、月面基地の住居をアースバックで造ることが、検討されています。

images-8

土を叩き締める工法は、人造石工法の【長七たたき】に似ています。
一般的なコンクリートの建築物に比べ、4倍もの強度があるといわれ、
アースバックのその頑強さは、台風や地震などの自然災害に強く、
また、保温性が高いため、夏涼しく・冬暖かい、天然の冷暖房です。

土の代わりに、「スコリア(火山性の砕石)」を使えば、さらに断熱効果に優れる『ハイブリッド・アースバック』も可能です。


【長七たたき(ちょうしちたたき)】
土木工事の神様といわれた天才左官・服部長七(1840~1919年)の発明した人造石工法。
長七たたきは、石灰に土を混ぜ,水で固練りしたものをたたいて硬く固める技法。
接着剤や高温を使わずに、堅く土を固めることが出来るというもの。



【アースバックの施工方法:シャンティクティ編】

施工方法を、簡単に説明すると、土嚢を並べて、ひたすら叩く。
叩いて、叩いて、平らにするの。
(最初の土台2段は、『空練り』。後の10段くらいは『地元の土』を詰めています)

IMG_1128

アースバック積むより、叩く方がしんどい。
打つべし、打つべし。

これ、男子の仕事です。

IMG_1137

このままだと、アースバックが崩れちゃうから、鉄条網を使います。
鉄条網って、こんな感じに「ちくわ」になってるのね。

これじゃ、手が痛いから、
真ん中に、適当な棒を差します。

IMG_1139

並べた土嚢袋の上に、ずーっと2列に鉄条網を引くの。
行って帰ってくれば、OK。

IMG_1145

その上に土嚢を積む。
鉄条網が、横方向のズレ防止になるのね。

IMG_1182

1)土嚢を積んだら、叩く。
2)叩いたら、鉄条網。
3)鉄条網引いたら、土嚢を積む。

この3つのシンプルな、永久ループ。

P6290056

塵も積もれば、山となる工法。

窓は、型で枠をつくり、「空練り」を入れた小さめの袋で、斜めに積んであります。
(空練り:水を入れないコンクリートの材料のこと)

P6290068

1mまで積み上がったら、
縦方向の固定に、1mの鉄の棒を打ち込みます。

その後、50cm積んだら、打ち込む。
この鉄の棒が、縦方向のズレ防止になるのね。

P6290059

直線にとらわれない、アースバックのデザインは、どのような造形も可能です。
今回は、渦巻き型の建築。

屋根はログの技法で造り、草屋根(ルーフトップガーデン)になります。
壁は、ストローベイルのように、土壁と漆喰で仕上げられる予定です。



【アースバックの施工例:穂高養生園】

アースバックは、日本に数件の施工例があります。
そのうちのひとつが、長野県の『穂高養生園』にある、美しいアースバックハウス。

P6160528

垂直に積んだ土嚢900個に土壁を塗り、
ログを組み合わせた、自然素材の持ち味と曲線を活かした建築です。

森とアースバックが、素敵に調和していますね。

P6160531

真実の窓。
中に使われている『土嚢袋』が見えます。
ひと袋30kg近くあるもの。

これを900個も使っているの。
アースバックを作るために必要なのは、土と袋と根性。

P6160529

建物の前にはベンチシートが作られていて、散歩の休憩所として利用されています。

ベンチに腰掛けると、遠くに川のせせらぎを聞きながら、
時を忘れて、ゆっくりと過ごすことが出来ます。

P6160532

ベンチシートには、小口に切った丸太。
タイルのように埋め込むように、ベンチをデザインしています。

P6160549

この曲線が、この建物の最大の特徴。

あ、家って、四角じゃなくて良いんだ。
そんな当たり前のことで、目からウロコ。

P6160534

妖精の家のような大きなドアを開けると・・・


P6160539

100Lのドラム缶を使った、小さいロケットストーブ。
8mの煙突横引き。

P6160548

ドラム缶の表面は、剥離剤を使って塗装を剥がしてありました。
黒光りして、メタリックなとこが、とても格好良い。

部屋の奥には、蓄熱ユニットの『暖まるベッド』があります。
モルタルで仕上げて、土を塗った施工。

P6160550

建物の上は、草屋根(ルーフ・トップガーデン)。
「カスタムサンド」というゴム製の素材で、屋根を葺きます。

森と一体になる家。


「家造り」には、無限大の可能性があります。
きっと「こうでなければならない」は無いと思うの。

こんな家が、もっと増えたら、きっと日本は楽しいとこになると思うんだ。



bluetailhappiness at 02:00│Comments(10)TrackBack(0)clip!例えばこんな話 

トラックバックURL

この記事へのコメント

1. Posted by とら   June 21, 2011 03:59
おひさしぶりです。

ついこのあいだ伊豆の長七美術館にいってきたのでつい反応してしまいました。

漆喰も夏すずしく冬あたたかく、また天災にも害虫にも強いとか。
そしてそのヒューマンスケールな手法と工程、芸術の粋にまで達した職人技に心奪われてきたのでした。

家って不思議ですね。帰っていく場所であり、人を招く場所であり、人と過ごす場所である家。

願わくばその一つ一つが素晴らしいものであることを。

2. Posted by goodtime-masuho   June 21, 2011 04:51
面白かった!合格!

山田く~ん、座布団1枚!
3. Posted by papa   June 21, 2011 08:41
長七美術館というのが、あるんですね。
行ってみたいなぁ。

とても興味があります。
教えてくださって、ありがとうございます、とらさん。

最近、ロイドカーンという人が書いた、家造りの本に巡り会いました。非常にユニークな建築が、辞典のようにぎっしり載っています。

この本、20代の頃に出会ってたら、たぶん違う人生を歩んだでしょうね。
でも、僕は料理人になったわけで。
料理もまた、楽しいですもの。
4. Posted by papa   June 21, 2011 08:43
>座布団1枚

いや、師匠、ありがとうございます。

次は、アースバック工法の実践編について、まとめてみようと思います。
5. Posted by まりぽさ   June 23, 2011 08:18
papaんちにも、うちにも近い将来アースバックハウスが出来るのかな♪♪♪
それぞれ好みや自然環境の違いがあるから、みーんな違うのが出来るて、楽しみだなあ。
6. Posted by papa   June 24, 2011 07:19
家って、同じじゃなくて良いのね。
そして、住むところを自分でデザインしていくこと。

火を使うのも楽しいですが、土や木を使う技術も楽しいですね。
アースバックやるなら、手伝いますよん。
7. Posted by    June 25, 2011 13:46
>次は、アースバック後方の実践編について

…失礼、お料理ブログと間違えてきちゃいました。

フフフ
8. Posted by papa   July 19, 2011 03:19
。さん。
無精して、実践編も盛り込んじゃいました。
9. Posted by イラン帰り   May 07, 2014 11:33
イランに住んでいた者ですが、ナーデル・ハリーリーと読むのが、現地語の発音に一番近いです。
10. Posted by papa   May 11, 2014 11:32
ありがとうございます。ハリーリーですね^^。

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔