November 04, 2012

5分で分かる「F1交配種って、何ですか」

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今日は、ときさんの畑の見学に来ました。

ときさんは、地元農家さんで、無施肥で野菜を作っています。
肥料を与えないの。

人と違ったことするのって、いろいろ苦労が多いのだと思う。
でもね。
彼はちょっと違うの。

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「これこれ、山科(やましな)って、在来種の茄子。
 これが旨いんだよねー。」

と、いっぱいの笑顔。
畑の見学は、終始こんな感じ。
すごく楽しそう。

農業のイメージって、もうなんか経済的に成立しなくって、
仕事多くって、ひたすら大変という感じだったから、ちょっと意外かも。

ホントに、なんでだろ。

「昔は、売れる野菜を作ろうとしたこともあったんだけど。
 自分が作りたくないから、手をかけなくって、あんまり良くなかったんだよね。
 今は、自分が美味しいと思うものを作ってる。
 もう、毎日手入れしながらさあ、収穫が楽しみで。」

そう、楽しいのだ。


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小松菜。

生でも、ばりばり食える。
小松菜って、サラダでも食べられるの。

小松菜って、現在の江戸川区の『小松川』で栽培されていた菜っ葉が始まりです。

鷹狩りにやってきた八代将軍・吉宗さまが、
神社の昼食で出されたこの菜っぱのおいしさにえらい感激し、
地名の『小松川の菜っ葉』だから『小松菜』と名付けたのが由来なのね。

ただ、小松菜は茎が折れやすい。
流通の過程でポキポキ折れちゃうし、折れたのは売れない。

だから小松菜に、同じアブラナ属のチンゲンサイを掛け合わせて、
茎を強くした小松菜を作るの。
今、普通に食卓に上る「小松菜」は、ほとんどがこの『掛け合わせ』。

茎は折れないから流通に便利だし、葉の色も濃い方が売れる。
そのかわり、一番大事な「味」を犠牲にしてしまってるの。


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今、野菜として流通しているほとんどの種は『F1(Filial 1=1代交配種)』というもの。

AとB。
異なる形の親を掛け合わせることを『交配(交雑)』というんだけど、
その子供は、優勢のみが遺伝します。
どういうことかって云うと、変な子がでない。

みんな同じ背丈の野菜が育ち、同じタイミングで、実がなるの。
これを『雑種強勢 (ざっしゅきょうせい) 』と呼びます。

イメージ的に、フランス人と日本人が結婚したら、
みんな同じ背丈で、同じ容姿の子供がでる・・みたいな?
出来るだけ、かけ離れた両親がよいの。

「収穫のタイミング」や「品質」が揃うから、農家さんは効率がよい。
しかも、収量が増えたり、生育が早まったり。
良いことずくめ。

次の世代は、雑種強勢がなくなって、品質もバラバラだけどさ。
でも、また新しい種を買えば良いのだもの。


ただ、日本人と日本人が結婚されると困るの。
あくまで、旦那さんは『フランス人』でないと、この雑種強勢は生まれません。

植物は、ひとつの花の中におしべもめしべもある品種(茄子とか)もあるから、
その場合、おしべを全部引っこ抜くという荒技が必要なの。

日本の家庭から、男性だけを全部除去すれば、フランス人と結婚せざるえない。
人件費かかるもん、そんなことしてられないでしょ。


でも植物って、たまに遺伝子エラーを起こして、おしべがつかない株が生まれるの。
最初から男性のいない日本の家庭。
これを『雄性不稔 (ゆうせいふねん)』といいます。

このおしべが出来ない子を使えば、
めでたく日本人とフランス人のカップルが生まれる。
そして、その子供も、おしべが出来ないから、来年は種がならない。

来年も農家さんは、種を買ってくれるから種屋さんも嬉しい。
収穫が揃うから、農家さん嬉しい。
形も揃うから、流通業者さんも、消費者も嬉しい。

野菜という存在だけが、どんどん自然から離れていくの。
私たちの生活と一緒に。


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『交配』と呼ばれる技術を、僕は否定はしないの。

でも、この交配は違う。
自然から離れてしまった存在は、脆く弱い。
野菜も、それを知らない僕たちの暮らしも。


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ときさんの野菜には、サプライズがある。

口に含むといつまでも余韻が残るプチトマトだったり、
伝統的にその土地で種を取り続けてきた甘さいっぱいの菜っ葉だったり。

だから、僕が手をかける必要がない。
必然と、調理法はシンプルなものに向かいます。


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違うことは、間違いではない。

たとえば。
手をかけ、味を組み立てていく料理。
シンプルに、野菜を引き出す料理。

その両方が、ひとつのお皿の上で調和するなら、
それは素敵なことだと思うの。



bluetailhappiness at 08:23│Comments(9)TrackBack(0)clip!例えばこんな話 

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この記事へのコメント

1. Posted by マングーの妻   November 04, 2012 20:51
こんばんは。

野口勲「タネが危ない」を読んでも、うまく人に伝えられなかった雄性不稔や雑種強勢、、、的確でわかりやすい表現に脱帽です。

ブログで紹介させていただきます~
2. Posted by Levi   November 04, 2012 22:10
こんばんわ

え、これが小松菜・・・葉の形が違いますね。
原種に近いのですか?

今はF1が巾を利かせていますよね。
自家採取して育てるほうが楽しいと思うけど、経済作物だとそうは言ってられないのかしら。

3. Posted by papa   November 04, 2012 22:25
こんばんは、マングーの妻さん。

F1と云う技術を、今の日本での食糧需要のためには
「必要だから良し」と、する考え方には疑問です。

自然であることから、僕たちの生活はどんどん離れて行く。
国同士のいざこざ。
放射能。
テレビでやってる話題の影で、
どんどん変わっていくものがあると云うこと。

僕たちは、もっと知る必要があるのね。
そのために、僕に出来ることをしたいなって思うの。
4. Posted by papa   November 04, 2012 22:33
「小松菜」は、今から200年前(江戸時代)の書物に、
「小松川地方の菜は茎丸くして少し青く味旨し」とあります。
丸葉で淡緑色が、小松菜の元来の姿だといわれています。

僕ね。
料理で青菜って、ほとんど使わなかったの。
美味しいって思ったことがない。

だからこそ、この小松菜には、目から鱗だったのね。

美味しい。
だから楽しくて、幸せ。

人は自分の「心地良い」「楽しい」と云う選択を
大事にして生きて良いのだと思います。
それは人から人へ、どこまでも伝わっていきます。

世界を変えることができるものがあるとしたら、
ただひとつだけ、その生き方だけだと思うのね。

それがときさんの畑で僕が学んだこと。
僕に足りなかったことだと思いました。
5. Posted by も。   November 04, 2012 22:55
おばばは、
野菜の工場栽培というものが
どうも腑に落ちません。

山間部に雇用を生む、
被災地や休耕地を有効利用できる、
衛生的、無農薬で安心、
計画性、安定性に優れた農業、
品質にバラツキがない、
まるで、
次世代農業の救世主のような扱い。

私にはなんだか、
人(個体)と、食物(個体)だけがそこにあって、
いのち(人、土、野菜、虫、微生物、天候)が
欠けているように思えてならないのですよ。

大地との関わりが、希薄になっていく…

交配もそうですが、
いのちの尊厳を軽んじる農業に、
本当に、未来はあるのでしょうか?

6. Posted by papa   November 04, 2012 23:15
こんばんは、もさん。

自然から外れたものは、必ず淘汰されるのが、摂理です。
しかし。今の、野菜はすっかり工業製品なのかもしれない。

おんなじ形、おんなじ重さの野菜がずらりとスーパーに並ぶ。
僕たちの都合で、どんどん変えられていきました。

野菜も、人間も、もう自然じゃなくなってきてる。
少なくとも、今の小松菜で、将軍さまは喜ばないと思うの^^。
7. Posted by わたなべあきひこ   November 11, 2012 22:26
「異なる形の親を掛け合わせるとその子供は、優勢のみが遺伝し、変な子がでない」……という説明、ちょっと乱暴なように思いました? そこのところ、ちょっと分かりにくいところだけど、生態系を保つための遺伝子の多様性ということでは、実はかなり大切なところではないかと思うのです。

 同じ部分の形質を伝える遺伝子が異なっていて、それがヘテロでなく、ホモである場合に限り、子どもは常にヘテロになるから、似た形質の子どもが多く発生する、ということで、親がホモであることを選別せずに、普通に異なる形質の生物が雑交した場合は、多様性を帯びたさまざまな形質の子どもが生まれます。そのために、生物には雌雄があると言っても言い過ぎではないのでは?とも思います。
 雄性不稔という形質も良くないことばかりではなく、実はとても大切な形質で、近親交配や自家受粉を防止し、種が多様性を得るためには、不稔という性質は優れた特質だったりします。こうした遺伝子の特性の上で交配を行っているのであれば、(種苗会社が儲かるということ意外)それほど大きな問題は起こらない(F2は育たないということではなくて、F2は形質を保全しないということだから)と思うのですが、それとは違って、こうした遺伝子の特性を無視して、人工的に遺伝子を操作してしまうと、生物は多様性を失い、種の多様性によって維持されてきた生態系のバランスが崩れ、地上の全生物はあっけなく滅んでしまうように思います。
 スミマセン、余計ごとが長くなってしまいました。
8. Posted by papa   November 11, 2012 23:03
わたなべさん。
書き直しも考えましたが、このままにします。

今回の話は、「きっかけ」ですもの。
中学生でも読んで分かりやすくをこころがけてみました。
この話を、もっと分かりやすく伝えたいと、思うのです。

確かに表現が悪いですが、現代農業サイドからの視点ということで、書いたものです。
僕は、雑種強勢も、雄性不稔も悪だと思っていませんもの。

補足すると。
もともと「優勢」は、優れた植物の姿というものではありません。
じゃあなんで優勢のみを選抜するのかというと、
植物の状態を一定に整えられるからです。

同じ大きさの野菜が、同時に実る。
効率の良い収穫には、必須です。

昔の野菜は、成長の早いのもあれば、遅いのもある。
大きくなったのから、順々に間引いて食べればよいから、
それで良かったのですね。

じゃあ、なぜ「雄性不稔」がおきるかというと、
同じ近親同士が掛け合い続ければ、種は弱くなっていきます。
稲も低温下では、雄性不稔の発生率が高くなり、
掛け合いが進むというデータがあります。

種の保存と多様化のために、「雄性不稔」もまた必要なものなんです。

しかし、それを使った野菜の量産は、自然に対して、過干渉です。
不自然なものは、必ず淘汰されます。

滅びるのは、地上の全生物ではなく、人間だけなのです。
自然であるものは、形を変えても残りますから。


今の野菜は、工業製品です。

私たちは、それがあたり前になってしまっている。
生まれる前から、そうですもの。

大量生産、大量消費をしなければ、経済的になりたたない。
だから、F1が必要と云う人もいます。
否定はしないけど、今の農業には、継続性がない。

固定種や、在来種の種の農業を楽しむ人もいます。
その「楽しい」という気持ちを、子供たちに伝えて行けたらと思うんです。
9. Posted by たこ   November 14, 2012 10:09
3 一度、自然栽培の農家さんのサイトで「F1でつくると、肥料や農薬が無いと育たない事に気付いた」と書かれてましたのを思い出しました。

あと、種の品種改良に少なからず「放射性物質」は使われているみたいです。

なんでも、種の中の「遺伝子の鎖を放射性物質で壊す」事で品種改良を進めるのだそうですよ、パパさん

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