February 14, 2014
チューニョを研究する

チューニョという食材がある。
アンデス高地の保存食で『凍結乾燥させたじゃがいも』。
じゃがいもが、こんな「黒い石ころ」のようになる。
大きさは、乾燥前の1/3まで縮み、
非常に軽く、10年近い保存にも耐えます。
また、凍結乾燥させる過程で、じゃがいもの毒性が抜け、
体を温める食材になるといいます。
(通常、茄子科のじゃがいもは、体を冷やします)
日本の寒冷地でも、似た作り方の保存食があり、
昔ながらの生活の知恵だったのでしょうね。
様々な可能性を持つ、チューニョ。
このチューニョの作り方の実践と、
その食材としての可能性を探ってみたいと思います。

今回、チューニョ化するのは、
直径3cmまでのじゃがいも。
普通だと、小さすぎて、捨てられてしまうような子です。
うちの畑でとれた子だから、捨てるのもったいなくてね。

チューニョ作りは、冬が良いです。
冷凍庫で夏に作ることも出来ますが、
アンモニア発酵して、匂いが出やすいようです。
1月。星空の見えるからっと晴れた夜に、
バットなどに並べて、野外に放置するの。
放射冷却を起こして、じゃがいもは芯まで凍ります。

次の日、室内で解凍し、
手で、ぎゅっと水分を絞り出します。
(大きなじゃがいもの場合、
凍結と乾燥を2~3日繰り返した方が良いかもしれません)

皮が剥けたところが、次第に黒くなって、
チューニョっぽく、なってきたでしょ?
最初に絞ったときに、皮は全部むいてしまいます。
あとあと残しておくと、剥きづらくなるの。
色も「まだら」になって、きれいに仕上がりません。

1)凍結→解凍→脱水。
皮を剥いて。
2)再凍結→解凍→脱水。
3)再凍結→解凍→脱水。
3回目は様子見で、必要ならやる感じ。
だいたい水分が絞れたら、網の上に並べます。
時々、ひっくり返しながら、からからの「黒い石ころ」になるまで、
乾燥させて出来上がりです。
(空気と触れてない部分があると、そこだけ黒くなりません)
ここまでは、作ったことがある人もいると思うのですが、
問題はこれをどうやって食べるか。
奥会津で、マクロビオティックのアンデス料理で有名な宿、『タンボロッジ』。
もうチューニョと云えば、タンボロッジですよ。
タンボロッジの料理長にアドバイスを頂いて、
チューニョの調理法を考えてみました。

チューニョは、朝晩、水を変えながら
2日、水戻しします。
暖かい時期は、水が痛みやすいので、
冷蔵庫で戻した方が良いかもしれません。

水戻しした、チューニョ。
半分に切ると、中心は白い。
このまま食べても、ぼそぼそして・・
うーん、旨くないな。
料理長のアドバイスだと、これを下茹でする必要があるそうです。

チューニョは、全部、半分に切りました。
親指の頭くらいの大きさが、食べやすく、
あとあと使いやすいです。
十分にチューニョが浸るだけの昆布だし。
ローリエ(月桂樹)を一枚。
包丁の背で潰した、ニンニク、大きめ1個。
飲んで美味しいくらいの塩(1Lに10gほど)。

これを冷たい状態から沸かし、
沸騰したら、アクを引きます。
生姜のスライスを4枚ほど加え、
ふつふつ云うくらいの火加減で、15分煮ます。
生姜のスライスを加えると、風味が良くなり、
茹でたチューニョの日持ちも良くなります。

15分経ったら、火を止め、
そのまま15分、休ませます。
この時間が重要になるの。

15分休ませてる間に、
チューニョがぐーっとスープを吸い込んで、太ります。
顔が出るくらい。
だから、その分を計算して、たっぷりの昆布出汁が必要なのね。

下茹でチューニョ。
水分を切って保存します。
この状態で、10日間の冷蔵保存が可能。
使い切れない分は、小分けにして、冷凍するとよいでしょう。
ここまで用意しておけば、使いたいときにすぐ使えます。
また、下茹でしたスープは、ラーメンみたいな味がするので、
捨てずに、いろいろ使って下さい。

チューニョの調理法として、
いちばん手っ取り早いのが、素揚げです。
高温でからりと揚げると、独特のクセが和らいで、
食べやすくなります。

揚げ方によって、表現は異なります。
左から・・
1)そのまま素揚げしたもの。
2)強力粉をまぶして、揚げたもの。
3)1mm厚にスライスして揚げた、チップス。
素揚げしたものは、そのまま食べても美味しく、
脱水されたぶん、下茹でしたものより、旨みを強く感じます。
このまま、トマト煮込みなどに使っても良いでしょう。
強力粉をまぶしたものは、素揚げよりもボリュームが出ます。
じゃがいも由来のほくほく感が、強調されます。
薄い衣がある分、エスカベッシュ(南蛮漬け)など、
さっぱりしたビネグレットソースなどが、絡みやすいメリットがあります。
逆にチップスは、かりっとした食感で、
料理のアクセントになるでしょう。
チューニョを刻んで使った料理で、
その存在をアピールするときに、有効な形です。
実際に料理に仕立ててみます。

左から。
『車麩とチューニョの生姜焼き』
下ごしらえした車麩とチューニョに、
強力粉をまぶし下揚げしたものを、
もう一度、高温で二度揚げして、噛み応えある食感を強調します。
それを、特製の「生姜焼きのたれ」で絡めます。
チューニョは、以外と醤油味と相性が良いのね。
『チューニョとしめじのトマト煮込み』
やや厚切りで食感を残した玉ねぎと、ざっくりほぐしたしめじ。
素揚げしたチューニョを、「木こり風トマトソース」で
さっぱりと煮込みます。
チューニョは、茄子科の野菜との相性がとても良いです。
『チューニョと人参のラペ』
下茹でしたチューニョを3mm角に小さく刻み、
チーズおろしで「ラペ(おろした)」した人参とレンズ豆を合わせ、
甘酸っぱい「林檎のドレッシング」で和えます。
そこに、から煎りしたホールのクミンを加え、一晩、冷蔵庫で寝かせたもの。
チューニョは、エキゾチックな香辛料。
また、ビネガーなどの酢を使った陰性の食材と、相性が良いです。
チューニョは、『じゃがいも』の香りとほくほく感という特徴を受け継ぎながら、クセになる独特の風味と食感があります。
使い方としては、煮崩れしないため、
豆や肉などの使い方に近いでしょうか。
料理に使った場合、食べ慣れない食材のため、
あわせる食材は、ふたつまで。
ある程度、食感のある食材を合わせると、まとまります。
醤油味との相性は、抜群ですね。
日本人にも受け入れやすい食材と思います。
いろいろなチューニョ料理にチャレンジしてみてね。
僕の作ったチューニョも、そろそろ無くなっちゃうなぁ。
要らない小さいじゃがいもがあったら、僕にくださいね。
美味しいチューニョを食べさせてあげます。
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この記事へのコメント
1. Posted by 。 February 15, 2014 19:14
煮っころがしたい…。
2. Posted by Levi February 15, 2014 21:17
こんばんわ
チュニーニョ、食べてみたいと思いつつ。
作れないままです。
今年は寒いから東京でもカラリと乾きそうですね。
小ぶりの新ジャガが出ているのでチャレンジしてみようかしら。
チュニーニョ、食べてみたいと思いつつ。
作れないままです。
今年は寒いから東京でもカラリと乾きそうですね。
小ぶりの新ジャガが出ているのでチャレンジしてみようかしら。
3. Posted by ノラ February 17, 2014 13:49
そちら雪の様子が心配ですが、大丈夫でしょうか?
いつもパパさんのブログに癒されています。
お料理の勉強に、育児、日々の励ましに。
でもやっぱりオハナ行きたいです。
オハナのお料理で心と身体にエネルギーチャージしたいです。
今度はいつ行けるかな。
いつもパパさんのブログに癒されています。
お料理の勉強に、育児、日々の励ましに。
でもやっぱりオハナ行きたいです。
オハナのお料理で心と身体にエネルギーチャージしたいです。
今度はいつ行けるかな。
4. Posted by papa February 18, 2014 09:12
「にっころがし」なら、得意です^^。
5. Posted by papa February 18, 2014 09:13
Leviさん、この方法で下ごしらえしたチューニョは、
スパイシーさが備わって、とても美味しいです。
和風にも応用できますし。
ぜひ、お試しください。
スパイシーさが備わって、とても美味しいです。
和風にも応用できますし。
ぜひ、お試しください。
6. Posted by papa February 18, 2014 09:15
ありがとう、ノラさん。
ちょっとみんな疲れが見えますね。
僕の場合、最近全然料理できてないのがねー。
もうちょっとですから、頑張りますね。
ちょっとみんな疲れが見えますね。
僕の場合、最近全然料理できてないのがねー。
もうちょっとですから、頑張りますね。
7. Posted by ノラ February 18, 2014 10:44
大変な時に的外れなコメントをしてしまいました。
ごめんなさい。
段々と明るみになっていく雪による影響に驚きました。
大変な状況と思いますが、一日も早い復旧を祈っています。
ごめんなさい。
段々と明るみになっていく雪による影響に驚きました。
大変な状況と思いますが、一日も早い復旧を祈っています。
8. Posted by タンボ・ロッジの料理長 February 18, 2014 23:43
凄いすごい、研究しまくりですね。
さすがですよ。
どんどんチューニョを生かしてください。
ところで、チューニョはちゃんと乾燥すると、なんと!!50年以上は保存できます。
素晴らしいアンデスの食材です。
さすがですよ。
どんどんチューニョを生かしてください。
ところで、チューニョはちゃんと乾燥すると、なんと!!50年以上は保存できます。
素晴らしいアンデスの食材です。
9. Posted by 。 February 19, 2014 23:06
なんか、ニュースで、
雪で孤立する山梨の様子ばかり
ずっと流れてるんですけど…?
パパさんのところは
大丈夫なんですの?
雪で孤立する山梨の様子ばかり
ずっと流れてるんですけど…?
パパさんのところは
大丈夫なんですの?
10. Posted by papa February 20, 2014 10:37
このチューニョ料理は、松本先生にささげます。
食べてもらいたかったなぁ。
食べてもらいたかったなぁ。
11. Posted by papa February 20, 2014 10:39
ニュース見ないので、どんな感じなんでしょう。
雪かきしたり、うどん打ったり、雪かきしたり、雪かきしたり、ごはん食べたり。
いつもより、若干、雪かきが多い感じです^^;。
雪かきしたり、うどん打ったり、雪かきしたり、雪かきしたり、ごはん食べたり。
いつもより、若干、雪かきが多い感じです^^;。