March 04, 2018

マクロビと進化論 7)フォルカスの倫理的な死

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テーマで書いていたシリーズ。
『マクロビと進化論』

「人間は何を食べるのが正しいのか?」
を進化論から考えてみようというお話で。

食の多様性。
それを互いに認め合うことが、
人の種の保存には最も良いのではないか?

シリーズはそんな幕引きで、
完結していたのでしたのですけど。

続きを書くことになるとは思わなかった。
科学技術の進化が、その「正しい」を大きく変え始めています。

それは『クリーンミート』が登場したから。

人は生きるために、食べる。
食べるために、殺す。

直接、家畜を殺めることがなくても、
植物ばかりを食べようと、
命を奪わなくてはならない。

それが、人の原罪です。

クリーンミートは、私たちの食事になる
「肉」を人工的に作り出す新しい技術です。

滅菌された培養液の中で、鶏肉のパーツだけを
成長させて、作り出すことが出来るの。
鶏の胸肉だけ培養すればいい。

鶏を1羽育てて、殺し、
その中から必要なパーツを取り出すという、
非合理的な仕事は必要なくなります。

たくさんの水、効率の悪い餌、
餌と肉を生産するための広大な敷地。
全て必要なくなる。

新人類のための新しい食糧。
培養された人工食肉。

僕は「うえっ」って思うよ。
新しいものに対する典型的な拒絶反応だよね 笑。

でもね、クリーンミート技術には、大きな切り札がある。

『殺さなくていい』

それは命を奪わない。
間接的にも。
人は初めて、罪のない食事を摂ることが出来るということ。
それは、絶対的な正義になり得ます。

あらゆるタイプの家畜の肉を再現することが可能で、
魚の肉も作り出せます。

家畜を育てて得る「肉」を使う従来の食事は、
一部のマニアのための趣味になるでしょう。
やがて野蛮な行為として、批判されるようになる。

喫煙だって、インディアンにとっては、
精霊とつながる神聖な儀式だったし、
昔、薬として扱われた時代もありましたし。

今、喫煙者はどこに行っても、嫌われ者です。
世論の正しいは、コロコロ変わる。
それと同じ。

殺さなくても食べるものがあるのに、
君はわざわざ牛を殺して、ステーキを食べる野蛮な人?
絶滅危惧種の鰻を捕まえて、蒲焼きなんて!
クリーンミートの刺身を食べなさいよ。

同調圧力がかかり始めたら、早いです。

テレビで肉を食べるシーンは、放送規制。
屠殺による食肉禁止法が制定され、
牧場主と漁師は全て、細胞農家に転職。

きっとアニマルライツのビーガン達が望む、
肉を食べるという原罪が消滅した世界。
次は植物の命を奪うベジタリアンの方に、
矛先が向くかもしれない。

あれ?
野菜も穀物も、
人工生成出来るんじゃない?みたいな。

世界は、多様性を失います。
しかし、倫理的には満たされている。

クリーンミートは人間の食として、正しい。

今の畜産も農業も、自然であることをとうに失いつつあるのだから。
その延長線上に、現れた必然といえます。

しかし、命を食べるから、食は尊い。
この流れは、遠からず人類を滅ぼしてしまうように思うのです。


食の正しさとは何なんだろう。

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カクヨム ネット小説/ 短編【フォルカスの倫理的な死】

クリーンミートが常識と変わる世界。
フォルカスという黒猫の倫理的な死。

bluetailhappiness at 11:17│Comments(0)clip!

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